命に代えて雨を降らせた龍

昔、未曾有の大干ばつがならを襲い、水は涸れて土は裂け、明野実りは到底期待できない有様に人々は困り果てていました。


◆龍の頭が落ちた場所には龍頭寺が建立されました◆

そこで、雨乞いの祈祷として法華八講が行なわれることになり、人々はこぞって聴聞にやってきました。講が終わり皆が帰ったあとも、一人の翁だけがそこに残っており、講師を勤めた僧に向かって言いました。

「先ほどの龍女成仏の分は、まことにありがたく身にしみました。実は私は、龍宮の龍です。お礼に雨を降らせて差し上げたく思いますが、私は小龍の身、大龍王の許しを得ないで雨を降らせれば、怒りに触れ、命をとられます。しかし、皆さんの気の毒な有様を見るにしのびません。露よりやすく、塵より軽い命です。わが身を捨てて雨を降らせましょう。後生菩提のことは、お任せいたします。」と言い終わったかと思うとたちまちくもが降りてきて、龍は雲に隠れてしまいました。

すると、龍が言ったとおり風はにわかにくもを起こして恵みの雨が降り出し、村人は大喜びしました。

やがて雨が晴れると、ものすごい物音とともに何かが天から落ちてきました。驚いてよく見ると、先ほどの龍の体が3つに断ち切られて死んでいるのでした。

村人はこの龍を憐れんで、頭、腹、尾のそれぞれを三箇所に葬り、寺を建て、それぞれ龍頭寺、竜腹寺、龍尾寺と名づけました。これらの寺は現存しています。