龍ヶ岩に棲む龍と娘:ドイツ

昔、ラインの両岸にまだ異教徒たちが住んでいた頃、七ヶ岳に、一頭の恐ろしい龍が棲んでいました。人々はその龍に毎日、人身御供を捧げていました。龍の生贄になったのは、たいてい哀れな戦時捕虜でした。


◆娘が十字架を高く掲げると、龍は退散しました◆

あるとき、この地方の住民たちはある戦いに出兵した際に、とても美しいキリスト教の娘を捕虜として連れてきました。首領たちは略奪した女を誰が所有するかについて意見がまとまらなかったので、この不幸な娘は生贄として龍に捧げられることになりました。

娘は白装束で花嫁のように飾られて祭壇の石の上にしっかりと縛り付けられました。娘は神の御心に委ねて、安らかに運命の時を待っていました。人々は遠くから呪縛されたように恐ろしい光景を眺めていました。

沈み行く太陽の最後の光が洞窟の入り口に射し込んだとき、龍は激しい息遣いで姿を現し、生贄を平らげようと、祭壇に向かって這って来ました。

しかし、高貴な娘はひるみませんでした。彼女は確信に満ちて、十字架像を高く掲げました。龍はこのしるしを見て、後ろへ引き下がりました。そして、うなり声を上げて、龍ヶ岩からライン川の中に向かって転がり落ちていきました。

人々は喜びと驚きに満ちて、娘を救おうと、急いで近づいていきました。こうして、人々はキリスト教の神の力を褒め称え、救われた娘を故郷に帰らせたのです。