龍になって不老不死の身を得た僧侶「難蔵」

昔、現在の姫路にあたる播州の書写山に難蔵という僧侶がいました。彼は法華経を尊んで非常に熱心な修行をしていました。


◆物語の舞台となる書写山は西の比叡山と言われています◆

ある時、このままずっと生き続けて、56億7000万年後(!)にこの世に出ておいでになるという弥勒菩薩(みろくぼさつ)に是非ともお会いしたい、という願を立て、くまの山にこもって千日間祈り続けました。

満願の夜お告げがあり、難蔵はそれにしたがって常陸と出羽の境にある言両山へ行き、山の頂上にある大きな池のほとりに草庵を結んでさらに修行を続けました。

すると、どこからともなく年頃の娘が現れて、難蔵の読む法華経を聴聞するようになりました。不審に思った難蔵がわけを尋ねると、娘は池の主の龍だと答えました。

龍女は、「龍というのは大変長生きで、一生のうちに千の仏が人間世界に出現するのに会うことができるのです。私と夫婦の契りを結んで龍となり、あなたの彼岸である弥勒菩薩とお会いになる日を待たれてはいかがですか」と誘いました。

僧侶である難蔵は悩みましたが、これも熊野の権現のお告げと考えてその池の中で一緒に住むことにしました。ところが妻の龍女の話によると、そこから三里ほどのところにある池に八つ頭の大蛇がいて、自分を妻とし、月の半分は龍女の池に通ってくるとのこと。

近々その大蛇がやってくると聞いた難蔵は、恐れることなく法華経八巻を頭の上に乗せると九頭の龍に変身しました。そして八つ頭の龍と戦って打ち負かし、相手を小さな池に追いやりました。

難蔵は今でも言両山の池に龍女とともに住んでいるといわれて、その法華経の読む声がかすかに聞こえてくるそうです。