七つの頭を持つ龍と羊飼い:スペイン

ある王様が住んでいる美しい村の近郊に、大きな洞窟がありました。そこには「エレンスゲ」という名の、七つの頭を持つ恐ろしい龍が棲みついていて、たくさんの人を貪り食っていました。


◆龍の頭は羊飼いではなく、別の男が持ち去って王女の婚約者に…◆

そこで、その村は龍と契約を結ぶことにしました。それは、一年に一人の娘を龍に差し出す代わりに、残りのものはそっとしておくという条件でした。

村のみんなは、どの娘を龍に差し出すか、くじで決めることにし、そのくじは王様の娘に当たってしまいました。そこで王様は、龍から娘を助けてくれたものに娘と結婚させ、王国を告がせると国中のものに言いました。

とうとう、龍に王女を差し出す日がやってきて、王女は木に縛り付けられました。人々は好奇心で近くの木の枝に登り、その様子を眺めていました。

もうすぐ龍がやってくるというとき、一人の羊飼いが、一匹の犬を従えてその場所へやってきました。そして縛られた娘に尋ねました。「あなたはそこで何をしているのですか」

羊飼いは、王女の口から彼女の身の上に起こったことを知り、犬と一緒に木の後ろに座りました。まもなく龍が、轟音と共に現れました。そこで羊飼いは犬に言いました。「セサル、掴みかかれ!」

それを聞くとその犬は、巨大な龍に飛び掛かってずたずたに引き裂きました。羊飼いはすぐに娘を解き放しました。王の家来が近くの木から降りてきて、王女に七つのスカートをはかせました。

そして一人の男が龍の頭を切ると、大きな袋に入れてさっさと持ち去ってしまいました。この男が龍の頭を袋に入れる前に、羊飼いは龍の頭から舌を一枚ずつ引き裂き、王女のスカートの切れ端と共に持ち帰りました。

王様は盛大なパーティーを催し、娘の婚約を祝いました。宮殿には王様と王女、そして王女の婚約者が座っていました。この婚約者は、袋に龍の頭を入れて持ち去った男でした。

誰も、王女のお付きのものさえも、あの羊飼いを招待しなかったのです。宴会も終わりに近づいた頃、誰にも気付かれずに犬を連れた羊飼いもやってきました。

王女は犬を見ると、大変驚きました。なぜならその犬に見覚えがあったからです。王はその犬を縛るよう、家来に命じました。犬のセサルは、主人である羊飼いのところへ逃げていきました。

そこで羊飼いは立ち上がって、王の前に出て行くと、次のように言いました。「この私の犬が、龍を退治したのです。それゆえ、あなたのお約束により、私が王女様と結婚しなければなりません」

それを聞くと、宮殿中が大騒ぎになりました。テーブルのところに座っていた王女の婚約者は、大きなお盆の上に、龍の頭を並べて言いました。「私がこの龍を殺したのだ」

「それらの頭には、あるものが足りないはずです」と、羊飼いは付け加えました。「ここに、そこにおられる王女様のスカートの切れ端に包んだ、七つの龍の頭の七枚の舌があります」

こうして羊飼いが王女の夫となり、王の跡継ぎとなったのでした。