尻尾を切られた龍:アラブ

昔、アラブの男が駱駝を何頭か持っていて、放牧のため、砂漠へ連れて行っていました。


◆龍は駱駝の乳を入れる器に夜光石を置いていきました◆

ある日、駱駝の乳をしぼり、乳の器を石の下へ置いたまま仕事へ出かけました。戻ってくると、あら不思議、器には駱駝の乳の代わりに綺麗な夜光石が一粒入っていました。

喜んだ男は、次の日も同じように、駱駝の乳をしぼり、器を石の下に置きました。そして、仕事へは出かける代わりに木陰に隠れて、誰が夜光石を置いたのかを見ようと思いました。

すると一匹の龍がやって来て、乳を飲むと行ってしまいました。驚いた男が、器を見に近寄ると、中には昨日と同じように夜光石が一粒ありました。味を占めた男は、しばらくの間、毎日のように器を置いては、後で戻ってきて、夜光石を一粒ずつ手に入れました。

龍のおかげで大金持ちになった男は、イスラム教の聖地であるメッカに巡礼に行きたくなりました。そこである日、息子と一緒に駱駝たちを連れて例の夜光石を手に入れた場所へやってきました。

男は息子に言いました。「息子よ、お前は毎日、器いっぱいの駱駝の乳をしぼりなさい。そして、この石の下に器を置いて仕事に出かけなさい。しばらくして戻ってくると、夜光石が手に入るであろう。」

そして、男は息子を置いてメッカへ巡礼に旅立ちました。息子は父親の言うとおりにして、毎日のように夜光石を手に入れて、非常に喜んだが、「誰がこの夜光石を置いていくのだろうか? そいつの後をつけて、根こそぎ夜光石を奪ってしまったほうが手っ取り早いんじゃないか?」と、独り言を言いました。

翌日、息子はいつものように乳をしぼって器の中に入れると、隠れました。すると龍がやってきて、乳を飲むと、鼻から夜光石を器に落として、去っていきました。

アラブの男の息子は、斧を持って龍を追っていった。すると、龍はちょうど洞窟へ入っていくところでした。息子は急いで斧を振り下ろしたものの、尻尾だけが切れて、龍は中へ入っていきました。

次の日、いつもの時間に駱駝の乳をしぼり、器を石の下において、隠れているとまた龍がやってきました。しかし、今度は駱駝の乳を飲まずに、毒を少しだけ注いで行ってしまいました。

アラブの男の息子は、「昨日、尻尾を切られて怒っているから、乳を飲まなかったのだな。しょうがないな。」と言い、毒が注がれていることも知らずに、駱駝の乳を飲んでしまいました。

何も知らずにメッカの巡礼から戻ってきた息子の父親は、村人から「息子が龍に殺された」と聞き、ショックで家に閉じこもってしまいました。しかし、いてもたってもいられなくなったある日、駱駝を連れて例の場所へ行きました。

すると尻尾のない龍がやってきて、「お前の息子が私の尻尾を切ったので、お返しに毒を持ってやった。お前も同じような目にあいたくなければ、駱駝を連れてさっさとここから消えうせるがいい!」と言いました。